マリンサーベイ講習会(アナポリス)受講記録(1/3)

 

 これは私が95年10月に米国アナポリスでマリンサーベイ講習会を受講した時の経緯

と、受講内容です。受講直後にPC-VAN「PCオーシャンヨットクラブ」に発表した

報告をそのまま再録します。

 今となってはまた違う考えもありますが、これがその当時の率直な感想です。

 

*****************

#8123/8715 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/10/ 1 20:55 ( 14)

ヨット鑑定>アメリカ行きが決まりました    CAP.黒潮丸

★内容

 今月16日から1週間、アナポリスで行なわれるヨット・サーベイ・セミナーに

出掛けることがやっと決まりました。キャンセル待ちだったのです。

 早速今朝からチケットや宿の手配にかかりましたが、生憎日曜で何も進みません

でした。

 このセミナーに出て、どんな得があるか判りませんが、とにかく行ってきます。

講義を聞いて、理解できるかどうか。生まれて初めての単独渡航です。休みをとっ

ての自費旅行です。

 なおセミナーの参加料は640$です。

                             CAP.

#8142/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/10/13 16:17 ( 15)

明日からアナポリス              CAP.黒潮丸

★内容

 明日、11・30の成田発でワシントンBWIに向かいます。

 そしてアナポリスのセバーン・リバー・ヨットクラブで行なわれるMr.Coble

のマリン・サーベイ・セミナーを受講します。

 アナポリスはアメリカ海軍士官学校のあるところです。古くからの港のようです。 

 帰途、シカゴに寄ってミシガン湖の水にも触って来ようと思っています。

 受講料640$、航空賃9万5千円、ホテル1泊平均120$。あと食費と買物

ですか。 

 成田帰着は26日です。

 留守中、よろしくお願いします。

                               CAP.

#8146/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/10/28 21:20 ( 28)

昨日帰宅しました               CAP.黒潮丸

★内容

 アナポリスでのマリン・サーベイ・セミナーに参加して、昨日帰宅しました。 

 海外滞在経験とか、会社の業務で英語を使う仕事についたことはまったくなく、

いきなりの一人旅、セミナー参加でしたが、なんとかこなして来ました。

 セミナーは8割くらいは理解出来たかなと思っています。 

 テキストや参考書など、30センチにもなったので荷物にして送りました。セミ

ナーの内容はそれが着いてからご報告します。

 報告内容は次のようになりましょうか。

   1、アナポリス−ボートショー

   2、チェサピーク湾のこと

   3、マリン・サーベイについて

       マリン・サーベイとは

       サーベイの種類

       サーベヤーとは

       ミスター・コーブルのこと

       受講者の顔触れ

       セミナーのやり方

       中古艇の価格

       サーベイの料金

       英語について

       受講の費用

   4、サーベイの実際

       サーベイ項目

       鑑定書

   5、ボルテイモア、ワシントン、シカゴ

 

                            CAP.


#8149/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/10/30 22:25 ( 49)

チェサピーク湾                CAP.黒潮丸

★内容

 チェサピーク湾のことを地図も写真もなしに文章だけで表現することは僕にはと

ても出来ませんが、でもなんとか紹介したい気持ちです。 

 アメリカの東海岸を概観するとボストンとかケープ・コッドが北にあって、ニュ

ーヨーク、そしてニュージャージーとかカロライナの海岸が続いて、フロリダ半島

の先端マイアミに至ります。

 そのニュージャージーの南に小さな口を開いた湾が、細く長くなんと185マイ

ルも北に入りこんでいます。巾は広いところで20マイルくらいです。一番奥のあ

たりにあるのがボルテイモアです。ちょっと下がってアナポリス。ワシントンDC

は50キロほど西の内陸になりますが、そこからポトマック河が50マイルも下っ

てチェサピーク湾に注いでいます。ボルテイモアとアナポリス、ワシントンDCの

3都市は一辺が40〜60kmの三角形をなしています。ボストンあたりのニュー

イングランドと並んで、天然の良港を背景にアメリカでも最も古く開けた土地です。 

 185マイルといえば東京から名古屋の距離ですから、房総半島がずーっと鼻を

伊良湖岬まで延ばしたと考えましょうか。そして東京湾、相模湾、駿河湾、遠州灘

を含めてチェサピーク湾です。ボルテイモアが東京なら、アナポリスはさしずめ横

須賀です。

 その内湾がすべて素晴らしい入江続きです。東京湾と決定的に違うのは白々しい

コンクリートの護岸が見えないことです。防波堤も見えません。理由の一つは潮位

差の小さいことでしょう。アナポリスでは20〜30センチしかありません。とに

かく人の手の入らない川や入江があって、いきなり家が建っています。そしてちょ

んちょんと杭を打ってボートが繋いであります。

 埋立地もありません。理由は、判りません。内陸に充分な土地があるから、わざ

わざお金をかけて土地を作る必要がないのでしょうか。それに埋めて作る土地より

も、天然の海岸線の方に価値を認めるのでしょう。 

 マリーナはその中でも良い場所に500隻、1000隻と船を並べています。チ

ェサピーク湾内だけでマリーナの数は200くらいあるのではないでしょうか。ま

あ東京から名古屋までの大きさの湾を考えたらそれも不思議ではないのかもしれま

せんが。

 日本で桜の花の盛りを評して「一目千両」と言いますが、アナポリスのあたり、

港を見ると一目千隻ならぬ一目2千隻のボート&ヨットです。

 これまで世界のヨット好適地を、地中海、カリブ海、南太平洋、そしてバンクー

バー周辺、NZのベイオブアイランドなどと考えてきましたが、チェサピーク湾が

その集積度、入江の数と変化、文化レベルの高さなどで上位に食い込んできそうで

す。知りませんでした。

 アナポリスからニューヨークまでヨットで行くコースを聞きましたら、2コース

あるそうです。湾奥から運河を伝って大西洋の出るルートと、湾口まで下がって大

西洋を上るルートです。5日くらいの航程だそうです。

 どうですか、どなたか一緒に行きませんか。

 ただ、大西洋に出る前に、湾内で10日ほどゆっくり過ごしたいな。 

                              CAP.

8159/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/ 3 21: 4 ( 26)

訂正、追加あれこれ              CAP.黒潮丸

★内容

 チェサピーク湾内のマリーナの数を200くらいかと書きましたが、なんと450以上もあるそうです! 

 アナポリス・ボートショーの感想で大事なことを書き忘れていました。

 価格を見て、あまり日本との差を感じなくなったのです。以前だったら、ヘー

こんなに安いのと感激したはずなのに、今回はあれ日本と変わらないや、の感じで

す。それくらい日本の価格が下がっているのです。20〜25フィートのフィッシ

ングボートの価格でそう感じました。たしかにボートの造り、あちこちの工夫は歴

史を踏まえてまだまだ向こうの方が上ですが、ただ上代価格には差がなくなったよ

うです。

 また、ヨットの中古価格では、向こうの方が高い感じです。例えば36〜40F

の6〜7年落ちで16万$前後の値段ですが、?と思います。意外にしっかりした

値段です。日本では中古ヨットは500〜700万円に買いが集中し、1000万

を超えると動きがないので実力以上に下がっています。従って海外で中古を買って

日本に持ち込んでも、価格的なメリットはないのではないでしょうか。TAKAさ

んのニュージーランドでの買物も(舵11月号)、あまり安いとは思いませんでし

たからね。

 パワーボートの中古価格は僕にはよく判りません。 

 セミナーの受講生が集まった時、最初に自己紹介や住所・電話番号などの申告が

あったのですが、その際E−MAIL番号も聞かれました。7人のうち3人が持っ

ていました。 

                                CAP.

 


マリンサーベイ講習会(アナポリス)受講記録(2/3)

 

#8154/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/ 1 21:55 ( 40)

MSS−1>マリンサーベイ・セミナー受講に至る経緯   CAP.黒潮丸

★内容

 (MSSとはマリンサーベイ・セミナーのこととします。) 

 マリンサーベイ・セミナーを受講するにいたった経緯を書いてみます。

 

 アメリカやオーストラリアで中古艇の取引には必ずサーベヤーが介在することは

かねて知識として知っていました。多分舵誌あたりで仕込んだ知識だと思います。

 数年前、NORC主催(?)のボート&ヨット保険の講習会に出たことがありま

す。その時の講師が毎月舵誌に保険講座を書いている新田肇氏です。僕自身はまだ

マリーナを開業する前で、いづれ保険のことも勉強しておかなければならなくなる

だろうと考えて出席したのです。その時に損害保険の査定における海事鑑定人の資

格とか、NORCの指定検査員という言葉を聞きました。しかし、当時その資格と

中古艇取引にあたってのサーベヤーの仕事とを結びつけて考えることはしませんで

した。

 彼は舵誌やヨッテイング誌の最近号の中古艇特集記事に登場し、鑑定人として脚

光を浴びています。 

 今年7月頃、我がマリーナのヨットオーナーの何人かから、艇を買い替えたいと

の話が出てきました。それで新しい艇を是非我が社から買ってもらいたいと考えま

した。となると従来の艇の下取りしなければなりません。これまで経験のないビジ

ネスですから、急遽中古艇市場の研究にかかりました。下取り艇が長期不良在庫に

なっては大変です。中古艇の需給はどうなっているのか、流通過程は、相場は、判

らないことばかりで、あちこちに話を聞きに歩きました。

 一方、下取りの価格を決めなければなりません。オーナーの希望もありましょう

が、こちらとしても幾らの価値のあるものか判断をしておかなければ商談が出来ま

せん。ヤマハや日産に教えを乞いました。彼らはそれなりの基準を持っていて、年

式による掛け率で下取り価格を決めているようでした。

 そこで思い出したのがアメリカやオーストラリアでのサーベヤーによるサーベイ

です。下取り艇のオーナーはいつも自分の船を大事に乗っている人たちでしたから、

ただ掛け率で引き取っては申し訳ない、艇の良いところをしっかり見てあげたい、

サーベイをやってみよう、と思い立ちました。

 まずD.ハワードの「サクセスフル・クルージング」(舵社)の巻末にリストがあったの

を思い出して参照し、次にニューヨークでサーベイを受けて中古艇を個人輸入して

きた人に実際の鑑定書を見せてもらったりして、僕なりのチェックリストを作りま

した。7ページほどになりました。僕自身、25年のクルーザーオーナー経験と、

5〜6隻の自艇売買経験があります。人一倍、自分でメンテの作業を行なってきま

した。それにマリーナの運営者としての経験も積み重なっています。

 こうしてオリジナルのチェックリストによりお客さまの艇をサーベイを行い、現

状の評価を報告しました。幸いにしてそのことで信頼をかち得たようで、次艇の販

売および下取りがうまく進んでいます。

                             −−続く−−

#8161/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/ 4 22:49 (112)

MSS−2>サーベヤーの資格         CAP.黒潮丸

★内容

 こうして中古艇市場の実態を探り、実際の中古艇のサーベイに関わっていきまし

た。

 中古艇市場は予想以上に活発で、売るための船が足りない、売り物が出たらすぐ

に駆け付けるという状況でした。しかし利は元にありで、引取価格は一方的にメー

カーサイドの査定基準に従って低めに押さえられているように感じられました。 

 マリーナで実際に行なったサーベイでは、売手からも買手からも評価されました。

本当に船を見てくれた、という気持ちが評価につながったと思います。

 ただこの段階では、サーベイ=鑑定の料金は頂きませんでした。マリーナで新艇

を売るのが主目的であったことと、まだサーベイについて料金を取るだけの自信も

実績もなかったからです。なおメーカーの査定においても査定料金の規定があるこ

とが判りましたが、彼らも現場(例えばサービスセンター)から営業に請求はする

が、営業は新艇が売れる場合には客に請求はしていないようでした。

 

 サーベイの結果について自信を深めるにつれ、サーベヤーの資格に関心が向きま

した。サーベイを行なうのに、何か資格が要るのだろうか?

 国内にプレジャーボートのサーベヤーの資格があると聞いたことはありません。

そもそもサーベヤーの存在すらあまり聞きません。ただ唯一サーベヤーを名乗って

商売をしているらしい新田氏が、損害保険のセミナーで「海事鑑定人」の資格を持

っていると言ったのを聞いた覚えがあり、雑誌のインタービューなどでもなんとな

くその資格をひけらかしている気配がありました。それで気になって何度か電話を

し、レターも差し上げたのですが、ご返事は頂けませんでした。

 外国ではどうなのか。アメリカ、ニュージーランド、オーストラリアの友人を頼

って問い合せました。その結果オーストラリアは判らなかったのですが、米とNZ

の状況が判りました。

 アメリカ サーベヤーを名乗るのになんの資格も登録も要らない。ただ一部のサ

     ーベヤーが、サーベヤーの技術を高め地位を上げるためにNAMSとい

     う協会を作っている。(NAMSについては後述)

 NZ   サーベヤーを名乗るのになんの資格も登録も要らない。ただ商船や漁

     船のサーベイを行なうためには英本国の海事協会の通信教育を受けて、

     資格を取る必要がある。受講にはしかるべき海事経験が必要である。 

 つまり両国ともプレジャーボートのサーベヤーになるのに、資格も登録も必要な

いのです。 

 そこで8月になってNAMSの資料を取り寄せ、そこに紹介されていたセミナー

に出掛けたというわけです。


 
                  

                                 CAP.

海事鑑定人のこと

 新田氏のいう「海事鑑定人」とは下記のことではないかと推測しています。

 港湾運送事業法

 第2条(定義)

  @、七、船積貨物の積付に関する証明、調査及び鑑定(以下「鑑定」という。)

  D、この法律で「鑑定人」とは、職業として鑑定に従事する者をいう。

 第3条(事業の種類)

  港湾運送事業の種類は、次に掲げるものとする。

  六、鑑定事業(前条第1項第七号に掲げる行為を行なう事業)

 

NAMSのこと             

 NAMSとはTHE NATIONAL ASSOCIATION OF

MARINE SURVEYORS,INC.のことです。

 つまり米国のヨット・サーベヤーの協会です。 

 アメリカでは今でも、ヨットのサーベヤーを名乗るのに、何の資格も登録も要り

ません。個人の経験と信用の上に開業しています。

 そういう中で、サーベヤーの技術レベルを高め、信用を増し、地位を高めるため

にサーベヤーが協会を作っています。

 以下はNAMSの口上です。

**************

概要

  1960年に84人のメンバーが集まって組織の基礎を作った。1980年に

 は新規入会者のための認定基準を導入した。能力を維持するために5年ごとに再

 認定を行なっている。

  会員は「サーベヤーは外部、内部あるいはいかなる影響によっても、自己の知

 識または信条からなされた判断を曲げてはならない。」という協会の綱領を守ら

 なければならない。

  米国内には数多くのサーベヤーがいるが、NAMSの認定サーベヤー(Cer

 tified Marine Surveyor)になる者は少数である。現在

 米国および諸外国に約400人のメンバーがいる。

  サーベヤーは、船殻、機関、装置類、船荷およびヨット・ボートのカテゴリー

 に分かれている。

資格要件

 NAMSの正会員

 @入会希望者は5年以上のマリンサーベヤーとしての経験が必要である。また業

  務の75%以上の時間をサーベイに費やしていなければならない。

  サーベヤーとしての経験が2年以上の場合、船の建造・修理、高級船員などサ

  ーベヤーに関係する経験年数が加算されることがある。

 A入会希望者はマリン関連の仲介、売買業務あるいは構内業務等に従事していて

  はならない。これはサーベヤーの倫理性を保つためである。

 NAMSの準会員

 @準会員は上記の要件を満たしながら経験が3年しかない者である。また準会員

  は3人の正会員の推薦を受けなければならない。

 A準会員にあってもマリン業界内の他職禁止の倫理は要求される。

 NAMSの見習会員

 @見習会員の資格はNAMSの正会員の監督下でサーベイ業務に従事しているこ

  とである。

 A見習会員は彼を責任をもって育成する正会員の推薦を受けなければならない。

 B見習会員は正会員になるに先立ち、200件以上のサーベイを経験しなければ

  ならない。また見習会員として3年経過後、半年以内に正会員の申請をしなけ

  ればならない。

 

スクーリング

  チャップマン・スクールというのがあって、「ヨットおよびスモールボートの

 サーベイ」の6週間コースを実施している。これが貴君のニーズに合っているか

 どうか、校長のチャールズ・コーダーに電話してみることをお薦めする。また「

 ウッデンボート・スクール」がウッドおよびファイバーグラス艇のサーベイに関

 するコースを実施しており、ポール・コーブル(CMSの一人)がファイバーグ

 ラス艇のコースをやっている。どのコースも今年中は一杯と思われるが、直接確

 かめてみるとよい。

                          ************

  

 なかなか厳しい組織のようです。特にマリン関連の他業兼業禁止が厳しいと思い

ます。

 アメリカには1千万隻のボートがあり、中古艇の取引には必ずサーベヤーをたて

るそうですから、とても400人のNAMS会員のサーベヤーで足りる筈がありま

せん。この10倍以上ものサーベヤーがいるのでしょう。(その後、全米で約6千

人のサーベヤーがいることを知りました。)

 なお400人の会員をボート数に比例して日本に引直せば、約32万隻ですから

約12人となります。日本中の中古艇取引に、とても12人で立ち合うことは出来

ません。

 

#8166/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/ 7 22:59 ( 82)

MSS−3>セミナーの受講に出掛ける     CAP.黒潮丸

★内容

 6週間コースは無理なので、NAMSの案内に出ていたMr.Paul Cobleのセミナーの予定を取り

寄せました。彼は全米のあちこちでセミナーを開催しているようです。95年秋の

予定は次の通りでした。 

Date: Location:

18th September  Jamestown. Rhode island.

16th october Annapolis. Maryland.

23th October Tarpon Spring. Florida.

30th October West Palm Beach. Florida.

13th November Sausalite. California. 

 こうしてアナポリスの講座を申し込んだのですが、早速ポールから自宅にFAX

が飛び込んで、ビクつきました。でも、このあたりFaxが使えたから随分気が楽

でした。最初から電話での折衝では、多分挫折していたでしょう。

 はじめキャンセル待ちと言われたのですが、9月の末になってOKの連絡があり

ました。それから切符の手配、宿の手配でしたから忙しかったです。切符はHIS

の格安切符、宿は「地球の歩き方」を見て、自分で電話しました。アナポリスでは

「The Flag House Inn」というB&Bにしました。行ってから

判ったことですが、海軍兵学校の正門から100メートルもない場所で、夫婦でや

っている家庭的な、素敵な宿でした。セミナー会場にも歩いて25分でしたが、こ

れは2日目からクリスが毎日拾ってくれたので歩くことはなくなりました。 

 アナポリスに到着した日がボートショーの最終日でしたが、堪能しました。内容

は既に書きました。

 とにかく一目2千隻のヨットに圧倒されました。

 The Flag House Innの全景  僕の到着を待って日の丸を掲揚してくれていました



ご夫妻の息子さんはウエストポイント(陸軍士官学校)、娘のお婿さんはアナポリス(海軍兵学校)と大変なご自慢でした




 

 セミナーの会場はもう一つ先の浦でしたが、そこにも幾つものマリーナがあって、

その一つのボートハウスの2階でした。40〜50人ほどが集まれるパーテイホー

ルで、冷蔵庫や流しの設備もありました。椅子は籐の応接セットです。

 コーブル先生


 これが講師のテーブルです


 気軽に集まって議論です

 集まった受講生は僕を入れて7人です。それが先生のポールを中心に半円を作っ

て一人掛け、二人掛けの低い椅子に座ります。中心に低いテーブル、これはもっぱ

ら現物の教材を並べる台になりました。先生はそのテーブルの後に高い椅子と、イ

ーゼルに小さな黒板をかけてそれで講義です。まさにセミナーなのです。 

 ポールは白髪の、年の頃ならもう75才か、いささか年寄です。ちょっとがっか

りしました。しかし矍鑠たるもので、講義でも現場実習でも率先垂範でした。ずっ

と海に関わってきた人で、一時はア・カップのイントレピッド(古いですねえ)の

チームにも入っていたそうです。乗り手ではなく、設計家でもなく、造船のSUPER-

VISERといった立場が長かったようです。サーベヤーとしての経験は30年にもな

ります。こういう人がNAMSの看板の下で、個人で、一人でセミナーを開講しています。

 さすがにパットという女性が手伝っていました。といっても昼にランチボックス

を持ってきてくれるだけですが。これが元気一杯のお婆さん(?)で、本人自身が

NAMSの会員で、ABYCの理事で、WHO’S WHOに名前が出ているそう

です。彼女も半日の講義をしましたが、なかなかの見識を持っている人でした。

 

 まず自己紹介から始まったのですが、僕も自分の経歴とか受講の目的を話した後、

「書いたものは判るけど聞くこと話すことが出来ないので心配だ」と言ったところ、

「それだけ話せれば充分だ。自分たちは日本語はまったく出来ない」と、先生だけ

でなく生徒みんなも言ってくれて、すっかり気が楽になりました。

 受講生の顔触れ。ジョーンは50代後半、彼だけがマリン業界ではありません。

釣りが好きでボートを持っています。最後の頃、「NAMSの会員になるつもりか

?」と聞いたら、照れて「いやいやそんなつもりはないよ」と言いましたが、定年

後の仕事に出来たらと考えているようでした。その他の5人は全員マリン業界でヤ

ードの仕事に携わっている人たちでした。エンジンの専門家もいればそうでない人

もいますが、営業マンはいません。みな、いづれサーベヤーの仕事がやれるように

勉強するのだと言っていました。年令は30〜40才。単なるワーカーではなく、

大学の工学部とか工業高校を出ているのだと思います。ただ一人、カナダのトロン

トから来ていたマークは、もともとニュージーランドの人間で、ヨットに乗ってカ

ナダまで来て居着いてしまったそうですが、彼はエンジニアというよりヨット人間

でしょう。なおトロントから車を運転してやってきたそうですが、800キロです。

東京から岡山か。みんな真面目で、よく勉強します。

 

特筆すべきは、全員会社から派遣されて来たのではなく、個人での参加だという

ことです。勉強とか教育はそういうもののようです。日本では教育は会社の仕事の

ようだし、うちの若い衆も何かというと会社が教えてくれないと言います。

 

 サイドテーブルにはいつもコーヒーが沸いていて、いつ取りに行ってもいいので

す。ドーナツかマフィンも並んでいます。

 ポールはいつも大きな犬を連れていて、講義中はそばで寝そべっています。名前

はマニー、現場実習にもついて行きます。

 こんな気楽な雰囲気ですが、セミナーの内容は徹底した現物、現場主義と討議が

ベースです。道具といえば何十もの道具がテーブルに並びます。モイスチャーメー

ターも、超音波計も、すぐに手にとって実際に計らせます。本といえば、すぐに並

べて、回覧です。腐食といえばビールケース一杯の実物見本です。そして午後は現

場。けっこうハードな一日でした。

 講義だけはなんとか辞書をひく余裕もあって、理解出来ましたが、討議になると

もう聞き取れませんでした。ある現場実習の後、その艇のサーベイをどうするかの

話し合いになりました。なんだか先生から当てられそうになり、先手を打って「日

本語で聞いてくれたらパーフェクトに答えられるんだがなあ」と言ったら、誰かが

まぜかえして「いや、カズ、日本語で答えたら誰にも判らないよ」と言うような雰

囲気でもありました。

 

#8168/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/ 8 20:22 ( 10)

MSS>追加 眠らない            CAP.黒潮丸

★内容

 セミナーでの受講風景で一つ書き忘れました。 

 彼らは絶対に居眠りをしません。寝ているのをまったく見ませんでした。日本だ

ったら必ず誰か眠るでしょう。

 どうしてでしょうか。 

 日本人は栄養素かビタミンか、何かが欠乏しているように思います。

 単なる気構えだけでこんなに違うとは考えられません。 

                             CAP.

 

#8179/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/13 21:19 (115)

MSS−4>セミナーの内容          CAP.黒潮丸

★内容

1、Who can benefit it? 誰のためのセミナーか?

  Independent marine surveyors. Insurance surveyors. Marine insurance ad-

juster. Boat builders. Marine Architects. Designers. Boat repairers.

Boat buyers. Boat owners. Delivery captains. Those in government regulatory

agencies involved witu small vessels. Historians and museum personal.

 

2、サーベイの種類

  購入に先立ってのサーベイ PREPURCHASE SURVEY

  艇の状態のサーベイ CONDITION SURVEY

  保険に関してのサーベイ DAMAGE SURVEY

    保険会社の立場にたって

      保険金額の妥当性(新規付保、更新)

      保管、運航状態の調査

      損害、損失額査定

      修理見通し、費用

    保険契約者の立場にたって

      損害・損失額査定

      修理見通し、費用

  コンサルテイング

      オーナーにたいして

      造船所、修理業者にたいして

  貸し船(LENDING)

      リース会社  リース設定、使用状況調査

  価格査定

      寄付行為

      離婚訴訟時の財産確定

  長期航海に先立ってのサーベイ

  チャーター前&後のサーベイ

  監督

      新艇建造時、修理/改装/改造

 

3、サーベイの限界

  上架時:メカやシステム、エンジンの作動が出来ない

  係留時:重要な水中部分の15%を見ることが出来ない

  放任:かえって大きな制約になる

  物理的限界:

    内部造作で隠されてしまった構造部分

    動かせないタンクの中、その周辺

    空気の流通に疑問のある場所

    入れない場所

    マスト等に登れない状況の時

  その他の制約条件

    冬期結氷

    寒すぎる時

    暗くて照明のない倉庫内

    100ボルト電源のない場所

    時間が足りない時

  船上で職人が働いていたり、造船所・修理工場の仕事が終わっていない時

  売主、ブローカー、買主、買主の物知りの友人などが居る時

 

4、海上試運転

  誰が費用を負担するのか?

  適切な時間の許可

  もしサーベヤーが操船する場合の責任の所在

  エンジン技術者その他との協同

  データを完成し、記録すること

  他の技術者が作成したデータや報告書のコピーの入手

  もし下請けを使うなら、彼の費用は君の責任である

 

5、ヨットおよび小型船舶の特性

   −略− 

6、安定性

   −略−

7、船体の基準、助言機関

   −略−

8、サーベイの項目

 0:一般事項

  サーベイの条件:水中か陸上か。海上試運転有無。

  場所:日付。天候。開始・終了時刻。交通費。諸費用。

  立合者:

  船:タイプ。状態。付属物。寸法。排水量。バラストのタイプ。

  保管状態:係留。上架。倉庫の内外。カバーの有無。

  書類:

1: HULL & STRUCTURAL

 2: DECK, DECKHOUSE, COCKPIT & DECK FITTINGS

3: PAINTS & COATINGS

4: INTERIOR

5: SPARS & RIGGING

6: PROPULSION, CONTROL & STEERINGS

7: PIPING, TANKS & SYSTEMS

8: ELECTRICAL, ELECTRONICS & NAVIGATION

9: MISCELLANIOUS LOOSE EQUIPMENT

 

9、サーベイの手順

   −略− 

10、サーベイの道具

  最も大切なものは諸君の五感である。

  ☆小ハンマー ☆折畳み尺 ☆フラッシュライト

  先のやわらかいヘラ ビスのサイズを測るゲージ カメラ

  ★モイスチャー・メーター

  その他30種

 

11、データの取り方

   −略− 

12、安全

   −略−

13、鑑定書

  記述(12〜20ページ)、チェックリスト

  Disclaimer or Scope Survey ?

 

14、サーベイの料金

  30〜35フィートで600〜800$。 交通費、エンジンチェックを除く。

  (これは日本国内でのヤマハの査定料金とほぼ同額です。しかし実施するサー

  ベイの内容は随分違います。)

   −詳細略−

 

15、その他諸注意

   −略−

                                   以上

サーベイ実習風景


左端がパット





マリンサーベイ講習会(アナポリス)受講記録(3/3)

 

 
ランチの大きなバーガーを前にポールがおどけています

#8181/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/14 20:54 ( 35)

MSS−5>米国の中古艇価格         CAP.黒潮丸

★内容

 Marine Blue Bookという本がありました。各艇種の中古艇価格が出ています。

 15年昔からの、新艇時価格と、Upper & lower price が出ています。厚さ8セ

ンチくらい、日本の中古車査定書の4倍はあるでしょう。それは掲出年次が長いの

と、艇種が目茶苦茶多いからです。

 日本の中古車査定書と決定的に違うのは、出ている価格が Retail price=小売り

価格であることです。だから Marine Blue Book は一般のユーザーが見て 参考に

します。日本の中古車査定書は引取価格が書かれており、ユーザーには秘密になっ

ています。

 

 中古艇の取引は、通常ブローカーの仲介により買主と売主の直接取引になります。

ボート業者が買い取って売るのは例外のようです。

 買主も売主も Blue Book によって売買対象艇の相場を知っています。そこで買主

はサーベヤーを雇って修理必要箇所を調査させ、その分値引きさせるのです。これ

が Prepurchase Survey です。

 日本にはサーベヤーはいない、と言ったら、受講生一同あきれた顔をしていまし

た。サーベヤーなしでどうやって値段を決めるのだ?というわけです。

 ブローカーは一般に売主の側に立ちますから、サーベヤーとブローカーは利害が

対立します。NAMSがサーベヤーの倫理性を特に問題にするのはまさにこの点で

す。両者が結託すればブローカーは利益を得ますから、仲の良いサーベヤーを買主

に推薦しようとします。そうして繁盛しているサベヤーも居るといいます。 

 サーベヤーは艇の状態をサーベイし、修理箇所・費用を見積もると同時に、艇の

現在価値も評価します。 Valuation です。売主や、所有者、保険会社が利用するの

はこの機能です。

 Mr. Coble は Valuation はあまり好きでないらしく、自分は Condition Survey

なしの Valuation だけは引き受けないと言っていました。  

 Marine Blue Book の Retail Price を誰がどうして決めるのか、残念ながら聞き

漏らしました。そのうちに問い合せるつもりです。

 他に、 American Society of Appraisers (鑑定人)という団体がありますす。

どういう団体か訊ねたのですが、あまりはっきりした返事をもらえませんでした。

裁判所とか損保に関連した鑑定人のようで、プレジャーボートの評価・鑑定とは直

接関係はないようです。 

                                 CAP.

 

#8184/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/16 21:31 ( 51)

MSS−6>日本にサーベヤーはいるか?    CAP.黒潮丸

★内容

 僕は次の三つの理由により、日本にサーベヤーはいないと断じます。

【注】これはこの時点での記述であり、現在はサーベヤーは存在します。 

1、サーベヤーであるためには、自らサーベヤーであると名乗らなければなりませ

 ん。サーベヤーであることを国家なり組織なりが保障してくれる資格制度がない

 以上、サーベヤーはみずからが自分をサーベヤーと規定しなければならないので

 す。

  NAMSではサーベヤーはサーベヤーとしてのみ業務を行い、マリン関連の他

 業との兼務を禁じています。

  日本にそんなサーベヤーが居るでしょうか。サーベヤーの看板を掲げた人がい

 るでしょうか。

  現在、日本でサーベヤーを名乗っているのは新田肇氏のみです。しかし僕は、

 以下に述べる2と3の理由から、彼がサーベヤーであることを認めたくない気持

 ちがあります。

 

2、損保業界のニーズに応じて、プレジャーボートの保険事故に関し、「指定検査

 員」なるものの養成が図られています。日本外洋帆走協会の名において行われて

 いますが、その実態を担っているNORC保険小委員会を切り回しているのは、

 前出の新田肇氏です。

  ところでこの指定検査員とは、保険業界用語でいうアジャスターに近いものと

 考えます。付保物件に関して発生した損害にたいして、その査定を行なうのが職

 務です。

  サーベヤーとは、保険会社の依頼に応じて損害査定を行なう職業ではありませ

 ん。 

 

3、日本海事検定協会なる組織があります。ここが「海事鑑定人として各運輸局へ

 届出、認可を受けていない者は、サーベヤーとして鑑定書は発行出来ない。」と

 宣伝しています。

  損保業界はこの宣伝を真に受けて、難しい損害のサーベイにはこの協会の鑑定

 人を委嘱しています。

  協会に、海事鑑定人の資格について問い合せたところ、次の回答を得ました。

   (1)港湾運送事業法上の鑑定業務を行なう場合には、監督官庁である運輸省の

    認可を、各鑑定人が受ける必要があります。

   (2)船舶の損傷サーベイに関しては、鑑定人に特別な資格は要求されていませ

    ん。

  これは特に問い合せたから(2)を答えたのであって、通常は(1)しか言わないの

 だと思います。

  ところで港湾運送事業法上の鑑定業務とは何でしょうか。法律にはこう明記さ

 れています。「船積貨物の積付に関する証明、調査および鑑定(以下鑑定という

 )」。これをもって「認可を受けていない者は、サーベヤーとして鑑定書は発行

 出来ない。」と宣伝するのは、「蝶々トンボも鳥のうち」的、詐欺的言辞です。

  さすがに新田氏も最近では、プレジャーボートのサーベイに資格は必要ないと

 明言していますすが、かっては協会と同じ発言をしていました。僕は忘れません。

  新田氏について更に言えば、彼が毎月舵誌に連載している記事は損害保険の啓

 蒙記事ではありますが、本来のサーベヤーとは立脚点が異なるように思います。

 先覚者としての彼の功績を認めるに吝かではありませんが、彼はあまりに保険に

 即きすぎています。 

                                 CAP.

#8185/8713 アンカレッジ(船溜まり)

★タイトル (CAPTAIN ) 95/11/16 21:53 ( 24)

MSS−番外>アメリカのクレジットカード   CAP.黒潮丸

★内容

 今更アメリカのクレジットカードの普及ぶりに驚いても仕方ありませんが、それ

でも僕が驚いたことが2件ありました。

 

 ボルテイモアのホテルを電話で予約した時、クレジットカードの番号を聞かれま

した。慣れない英語でしどろもどろになりながら、遠い日本から伝えた番号を別に

読み返しもせず予約は終わりました。それなりの身元保証確認なのだろうと思いま

した。

 チェックアウトの時こちらがカードを出したら、もう勘定書に番号が打ち込まれ

います。どうやらあの電話で聞いた番号らしいのです。カードと照合するでもなく、

それだけです。

 もし番号を言い間違い、聞き違いがあったらどうするのでしょう?意図的に違う

番号を言ったらどうなるのでしょう?

 

 セミナー会場で、本などの頒布があり、カードでも受けてもらえました。そんな

場所ですからカードリーダーがあるはずもなく、ただメモの端にカード番号を控え

るだけです。サインすら要りません。それと彼は個人営業です。

 それで簡単に決済されるのです。

 日本のクレジット会社は、個人やそれに毛に生えたような小企業ではクレジット

カードによる決済を受けてくれません。通信での商売で一番困るのがこの点です。

シェアウエアの代金決済にもカード引落しが出来たらどんなに便利でしょう。

 そうだ、シンガポールに預金をおいてカードを作ろうか。 

注:1995年当時の状況です

                               CAP.


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