ボートシェアリング試論
マリンサーベヤー 森下一義
OfficePCC:0557-53-4401
pccgarden@gmail.com
1.目的
2.私の共同利用経験
3.従来のボート共同利用の形態
4.カーシェアリングについて
5.ヤマハマリンクラブ「シースタイル」
6.ボート保有のコスト
7.ボートシェアリング成立の条件
8.まとめ
1.目的
私のマリン関連サイト「中古艇相談とマリンサーベイ」に「チャータークルーズ講座」を掲載した際、<チャーター><共同オーナー><仲間募集><マリンクラブ>などについて考えることがあり、また近年環境問題のクローズアップとともに共同利用<シェアリング>に対する関心が高まっていることから、「ボートシェアリング」についての考察を行った。
ここでの試論はヨット&ボート共同利用の現状および問題点と、<ボートシェアリング>成立の条件を検討するまでであり、<ボートシェアリング>を具体的に提案するものではない。
昨今原油価格の高騰、レジャーに費消する金額&時間の激減(08年レジャー白書)などマリンレジャーにとってアゲインストの風が強いが、シェアリングによってこの危機を乗り越えてもらいたいと願う。
2.私の共同利用経験
50年に及ぶ私のマリンライフの中で、私がこれまでに経験してきたヨットの共同利用について記しておきたい。
これらの共同利用の体験の上に、このボートシェアリング試論を書いている。
形態
場所
摘要
貸しヨット
ディンギー
神奈川、千葉
20才代の夏はもっぱら浜に行って貸しヨット遊びだった。まだ週休2日でない時代、ひと夏に8回海に行った。
貸しヨットばかりで、私は○○学校、○○部、○○さんなど他人のヨットに乗ったことがない。
冬はサッカー、ラグビーがあったし、30才代になってゴルフが始まったので貸しヨット狂いは20才代の10年だったか。
共同所有
21Fヨット
館山
36才で初めてのクルーザーを購入した際、勤務先の同僚4人と共同所有とした。
メンバーの転勤により共同グループはたちまち破綻した。
その後自艇を共同所有することをやめた。
マリンクラブ
33Fヨット
五ケ所湾
名古屋に転勤した際、五ケ所湾のヴィーブル・オーシャンクラブに入会した。
クラブ艇として往年の名艇「天城」(第1回八丈レース優勝艇)があり、まだ会員も少なかったので殆ど自由に乗れた。
関東、関西とどれほど乗り回したことか。
共同所有
30Fヨット
神戸須磨
神戸に転勤した際、たまたま須磨YHのメンバーが共同オーナーを募集しており、仲間に入れてもらった。
3年後転勤の時、出資分は放棄した。
チャータークルーズ
南太平洋 ほか
アラスカ→カナダほか、各地のチャーターヨットを体験した。
NZ、AUS、Tongaなど南太平洋が中心で、カリブ海や欧州は未体験である。
マリンクラブ
30−40F 4艇
三河みとマリーナ
1993年、出光マリンズ・三河みとマリーナを開設した際、会員制のマリンクラブを立ち上げた。
入会金400万円、保証金800万円、年会費150万円で約50口集めた。出光興産の取引先に協力願った分が多いが、マリンクラブとしては成功した部類ではないか。
システムの設計から会員募集、クラブの運営のすべてを手掛けた。
3.従来のボート共同利用の形態
現在一般に行われているヨット&ボート共同利用の形態を分類し、各々の実態について述べる。
方式
実態
1−共同オーナー
艇の所有権をシェアする方式です。小型船舶登録法にもとづき共有の登録を行います。
分担によるオーナー個人の負担軽減、仲間作り、人手の確保、の面から非常に有効な方式で、充実した楽しいマリンライフを期待出来ます。
当然のことながら大人が何人も寄るのですから意見の相違が発生します。話し合いで解決していかねばなりません。
しかし克服出来ない決定的な問題点があります。メンバーは転勤、転居、結婚、病気など個人的環境変化で<共同オーナー>の立場を継続出来なくなる場合があります。通常共同オーナーグループはその穴埋めをすることが出来ません。
2−仲間募集(会費制)
常時乗艇する仲間を募り、会費の拠出(固定費部分)と出艇の費用(変動費部分)分担でオーナーおよび参加者の負担費用を軽減し、仲間作りや人手の確保を図る方式です。
通常、艇の取得費用の分担は求めません。
自分の艇を持たない人にとって、ゲスト或いはクルーとして乗るよりも気持ちの負担が少なく、社会人の乗り方として相応しい方式です。
問題は艇の運航に関する決定権はオーナーにあることです。カーシェアリングのように、乗った人のオプションで自由に乗り回すことは出来ません。
参考:
・marinedoor.comというサイトがあり、その中で「各地のヨット」を紹介しているが、その殆どが仲間を募集しています。壮観です。
・<仲間募集 ヨット>で検索すればヒット多数。
3−個人艇マリンクラブ
前項の<仲間募集>を1歩すすめ、規約を定めて広くクラブ員を集める形態です。
多少営業活動的な面が出てきますが、オーナーは個人でありアマチュアグループの良さが残ります。
規約によってはメンバーのオプションによる運航が可能です。
参考:
・ブルームーン・クラブ 横浜市民YH
4−ボートレンタル
貸しヨット・貸しボート屋です。不特定の人に貸し出します。通常時間貸しです。
5−ボートチャーター
所謂海外のチャータークルーズですが、日本ではあまり実例はないようです。最近、個人艇のチャーター提供が稀に見られます。
時間貸しではなく、1日以上の単位になります。
6−マリンクラブ(レンタル)
会員制のボートレンタルクラブで小型艇が多いです。通常ベアボート(操縦するのは借りた人)で時間貸しです。
管理運営業者はボート、泊地を持ちます。
参考:
レンタルディンギークラブ 葉山マリーナ
ニューポートマリンクラブ 江戸川
7−マリンクラブ(チャーター)
会員制のマリンクラブで、通常クルードチャーターです。半日−1日チャーターが主流です。法人の接待・福利厚生利用が主体なので、マリン未経験者が多く、長時間の航海に耐えません。
管理運営業者はボート、泊地および運航スタッフを持ちます。
1986年−1995年頃全盛を極めたが、企業が接待・福利厚生に金を費わなくなって廃れました。
参考:
KMCマリンクラブ 大黒ふ頭
4.シェアリングについて−特にカーシェアリング
社会環境の変化に伴って<シェアリング>の意識が高まり、いろんな形・分野での共同利用が普及しつつある。
例
ワークシェアリング
ルームシェアリング(アパートなど個室を)
ルームシェアリング(リゾートマンションなど利用権を)
カーシェアリング
シェアモ(不用品の活用)
この中で特に<カーシェアリング>について考察したい。
カーシェアリングについて
カーシェアリング普及推進協議会のHPより
カーシェアリングとは
<カーシェアリングとは、1台の自動車を複数の会員が共同で利用する自動車の新しい利用形態です。
利用者は自ら自動車を所有せず、管理団体の会員となり、必要な時にその団体の自動車を借りるという、会員制レンタカーのようなものです。> カーシェアリング普及推進協議会
意義
1.環境破壊の抑止
2.所有者の経費節減
レンタカーとの違い
1.会員制であること
2.短時間の利用が可能−(15分から貸出し可能 レンタカーは最低6時間から)
3.無人の貸出し・返却が原則−(IT技術活用)
4.貸出し・返却場所の利便性が高い-(駅前、大きなビルなど)
将来性
1.技術進歩に対応していく−(ケータイ、ICチップ、GPSなど取り入れつつある)
2.社会環境の変化に対応する−(環境問題、都市交通問題、住宅事情などへの対応)
3.公共交通機関との連携
問題点
1.所有意識−(車は財産の観念が抜けきらない)
2.プライバシー−(車は個人の趣味、車中は自分専用の空間、の意識が強い)
3.共同使用に対する法規制が強い−(受渡し時の対面確認、返却後の車両点検など)
カーシェアリングの料金プラン
オリックス−カーシェアリング 「プチレンタ」の料金プランとQ&A
料金プラン
http://www.orix-carsharing.com/plan.html
●利用料金には何が含まれているのですか?
保険料、ガソリン代など車両にかかる費用は月額基本使用料(月会費)および貸渡料金・距離料金に含まれています。
●ペットをクルマに乗せてもいいのですか?また車内でタバコは吸えるのですか?
カーシェアリングは共同で利用するサービスで、お客さまによっては動物アレルギーをお持ちの場合もありますので、ペットの同乗は禁止しております。同様に、車内も全車禁煙となっております。お互いにマナーを守り、気持ちよくご利用できるようご協力ください。
●自分のICカードを家族・同僚に貸してもいいのですか?
個人認証をICカードで行うため、たとえご家族であっても、ご本人以外が使用することはできません。
●渋滞につかまって時間内に戻れそうにない!そんなときは、どうなるのですか?
基本的には予約時間までに返却していただくのがルールですが、万が一遅れそうなときはお電話にて状況をご連絡ください。予約時間を超えた分については延長した分の利用料金をいただきますが、連絡なしで遅れた場合は超過分に対して正規の2倍の料金をいただきますので、ご注意ください。
●車両の掃除は利用後に自分でやるのですか?
スタッフが定期的に洗車や清掃を行っていますが、ゴミは、お客さまご自身でお持ち帰りください。また、次の方が気持ちよく利用できるよう、車内をキレイにしてご返却ください。
●利用中に車両を傷つけたらどうすればよいのですか?
自動車保険の範囲内で修理が可能です。損傷状況を直ちに管理センターに連絡してください。(車両を修理する場合はNOC=ノンオペレーションチャージ=休車損害補償料が発生します)損害の程度にかかわらず自走できる事故の場合:20,000円、自走できない事故の場合:50,000円+車両レッカー代が発生します。
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ヤマハはかねてわが国のマリン文化の担い手としての強い自覚と自負を持ち、多年にわたり努力を続けてきた。
ボートを持たない人がマリンレジャーを楽しめるマリンクラブについても長らくいろいろな形での実践を行ってきたが、近年普及を図っている「シースタイル」は幾つかの点で従来のヤマハクラブから脱皮した特色を持ち、これまで苦労していたのに較べて好調に会員を増やしているようである。
1)ヤマハ・マリンクラブ「シースタイル」の概要
(ヤマハのパンフ、HPを見ただけなので、推測を多く含みます)
運営主体
ヤマハ
提携マリーナとの業務分担は、契約を見ていないのではっきり判らない
会員数
1万2500人
会員数の多いのに驚く
提携マリーナ数
135ヶ所 2008・8現在
ヤマハでは「ホームマリーナ」と称している
クラブ艇数
約300隻
クラブ艇の内容
21Fから24Fの、クルージング、フィッシング、トーイングの3つのタイプのヤマハ艇を揃えている
マリーナによりクラブ艇の隻数、種別は異なる
クラブ艇の装備
全艇GPS装備、損害保険付保
傷つけた場合の会員負担は免責金額の5万円まで 「プチレンタ」にある休業補償は言及はない
クラブ艇の程度
新艇進水後3年間使用
クラブ規約に記載は無いが、提携マリーナのHPに<規定に従い3年経過したので新艇に入替えた>の記述があった
会員制
入会金:21000円
月会費:3150円
利用料:別紙
条件により変るがハイシーズン平日3時間の21F艇で8000円、24F艇で20000円
入会資格:18才以上、2級免許
2)「シースタイル」の特色
特色
1.会員は提携マリーナのどこでも利用できる。
これがクラブの魅力を増していると思われる。
2.提携マリーナの数が多く、有名マリーナが多く参加している。参加マリーナは現在も増えつつあるようだ。
わきサンマリーナ、横浜ベイサイド、逗子マリーナ、葉山マリーナ、シーボニア、伊東サンライズ、三河みとマリーナ、ラグーナ蒲郡、合歓の里、新西宮YH、サントピア、ボートパーク広島、福岡マリノア、長崎サンセット など
3.保有クラブ艇を増やす提携マリーナが多い。好調の証しであろう。
横浜ベイサイド6隻、江戸川ニューポート7隻、河芸マリーナ10隻、和歌山マリーナ9隻、新西宮YH8隻 など
4.ファッション性の獲得
有名マリーナ、大規模マリーナ、交通至便マリーナが多く参加したことにより、これまでのディンギークラブや貸し釣り船のイメージから、マリンリゾートのファッション性を獲得したと目される。
5.クルードチャーターなど多角化
これまでの個人向けマリンクラブは会員が運転する<ベアボートチャーター>が常識であったが、ヤマハは大型マリーナとの提携が進んだことで「シースタイル−ライト」として派遣船長が運転する<クルードチャーター>のサービスを始めた。料金は2000−4000円/回と安い。これにより諸イベントへの参加勧誘など、提供する遊び方メニューが大きく広がった。
3)「シースタイル」の問題点
問題点
1.船中泊出来るサイズの艇がない
マリンプレジャーで最も楽しいのは船中泊である(と私は思う)。船中泊出来る艇がないのは淋しい。
2.ディンギーの艇揃えがない。
マリンスポーツへの入口はまずディンギーであり、ヤマハは長年ディンギーの普及に努力を続けてきた。今回「シースタイル」がディンギーの艇揃えを放棄したのは、マリーナの利便性、ファッション性を選択したことに伴う犠牲である。通常マリーナ内では無機関のディンギーとパワーボートは共存出来ない。
3.セーリングクルーザーがない
30F−35Fのセーリングクルーザーがないのは淋しい。
4.会員数 会員数が多いのはよいことだが、12500名というのは1隻あたり41名である。大成功である。これで維持出来れば素晴らしい。
5.理念が語られていない
ヤマハは長年の苦労でもう理念を語ることに疲れてしまったのかもしれないが、マリンクラブ「シースタイル」について、もっと<マリンレジャーの普及>とか<共同利用による環境への貢献>を語ってもいいのではないか。
6.価格はどうか?
一般人が普段接することのない世界、殆ど比較情報がない世界で、設定された料金プランが適正かどうか判断する材料がない。競争相手の出現が望まれる。
4)ヤマハ・マリンクラブ「シースタイル」の意義
私はヤマハ・マリンクラブ「シースタイル」が果たしている最大の意義は、公共の出資を受けているマリーナでの営業活動を認めさせたことだと思う。
これまでわが国のマリーナでは港内での営業活動は厳しく禁じられていた。まして公設の場合、営業行為は論外であった。
ヤマハが提携マリーナ(ヤマハの言う<ホームマリーナ>)とどのような契約をしているか知らないが、ヤマハ自体の営業行為であれ、マリーナの営業活動であれ、いずれにしろマリーナ内で営業活動が始まったことに違いはない。
この途をつけたヤマハは大事業を成し遂げたと賞賛されるべきである。
今後、他の業者が港内で営業活動をすることを、それが正当なものである限り、止める理由はなくなった。
6.ボート保有のコスト
ヨット&ボートに馴染みの少ない人のために、保有コストと出航費用について触れておきたい。
1)21F中古ボートの年間経費
景山久紀氏のサイト「中古艇ドット・コム」に、「ボート共同所有のすすめ」なるコラムを書かれている。非常に詳しく、いいコラムである。ご参照あれ。
この中からボート保有のコストを抜書きしてみる。
購入ボートとマリーナ
中古の21F、船外機艇を150万円で購入したとする。
置き場所を横浜ベイサイドマリーナに想定する。
初期費用
ボート購入費
1,500
マリーナ保証金
600
契約解除すれば全額返金される
初期整備および備品
150
概算
合計
2,250
毎年の維持費
償却費
180
年間12%としている
保管料
441
船底塗装または上下架料
100
年2回、自分たちで塗るとしている。陸上保管の場合2回の塗装は必要ないが、出航都度の上下架料が必要となる。
メンテ費用
50
急な修理への積立
70
保険・BAN
50
対人・対物
合計
891
所見
・ボート保管料の441千円/年は横浜価格であり、地方都市なら25万円程度からある。
・シェアリングを考える場合、保険は「船体」付保が必須であろう。
・ボート購入費が150万円で、毎年の維持経費が100万円近い。この他に毎回の出航費用(燃料、飲食代など)が必要となる。
・150万円は出せても毎年の100万円が大変なので、ボートシェアリングへのニーズが高まるのである。
・40Fのボートを、日常の管理をマリーナに委託して保管したりすれば、年間維持費は償却を除いて300万円にもなるであろう。
2)30F中古ヨットの年間経費
ボートとヨットでは保有や遊び方のコンセプトが大きく違うのだが、私なりの見方で30F中古ヨットの年間経費を出してみよう。
保管は地方のマリーナを想定した。ヨットは10才で700万円の艇を想定した。
30F中古ヨット
ディーゼル船内機の30F中古ヨットとする。購入価格700万円。
マリーナは地方都市で、年間保管料50万円とする。
初期費用
ヨット購入費
7,000
マリーナ保証金
500
初期整備および備品
350
ヨット取得費の1部ともいえる
合計
7,850
毎年の経費
償却費
840
5年後に取得価格の40%で売れるとして、年間12%
保管料
500
船底塗装
250
業者1回、自前1回
メンテ費用
100
エンジン定期点検など
急な修理への積立
100
何が起きるか判らない
保険・BAN
250
対人、対物、船体、捜索費用
合計
2,040
所見
・艇が大きいだけ維持費は嵩むが、毎回の出航費用はパワーボートよりずっと安い。
・それにしても30Fの中古艇で、償却を除いて年間120万円かかっては若いサラリーマンではとても持ちきれない。
・私の場合、<保管料>は出来るだけタダの場所(館山自衛隊岸壁、武豊自主泊地、清水自主泊地、伊東漁港岸壁など)を探して置いた。どこも護岸にハシゴをかけてよじ登ったりテンダーで渡ったりで、レジャーというには程遠い厳しい環境だった。まして女性を惹き付けるようなファッション性は皆無だった。その辛さが身に染みて「三河みとマリーナ」を作る原動力になったのだが。<塗装><エンジン点検>はすべて自前、<船体保険>には入らなかった。こうしてサラリーマンとして30年間クルーザーを持ち続けたが、相当無理があった。こういう無理をシェアするのは無理である。
3)ヨット&ボートの出航費用
維持費ではなく、毎回の出航のための費用はどれほど掛かるのか。
これは殆どが燃料代である。食費はボートに乗らなくても掛かる。
燃費はエンジンの馬力、スピード、海況(風や波や潮)によって大差がでる。
21F艇であれば、80馬力のガソリン船外機としてガソリン使用量は15L−25L/1時間程度であろう。20Lとして金額で4000円/時間である。1日遊びに出て、エンジンを4時間廻したとして16,000円である。
30Fボートともなれば、時間あたり70L以上にもなろう。
一方、30Fのヨットの場合を考えてみよう。ヨットでのクルージングでセーリングだけで走ることは殆どない。エンジン併用の機帆走が80%以上である。
エンジンは40馬力程度のディーゼル船内機として燃費は4L/時間。横浜―城ヶ島20マイルを4時間で走って16Lで約2500円、往復で5000円である。
4)年間の出航回数
プレジャーボートの稼働率はどれくらいなのだろう?マリーナに保管されたヨット&ボートは年間何回出航するのか?実は稼働率に関しての統計はない。
以前ボート雑誌が行ったアンケート調査で、<年間12回>という数字があった。非常に少ないのである。実際マリーナに行ってみると、ハイシーズンの休日なのに多くのヨット&ボートが舫われたままである。
私の場合は年間50日程度であった。
オーナーがボートをどのように使おうが構わないわけだが、ボートシェアリングを考える場合出航回数が問題になる。
ボートシェアリングはボートをみんなでシェアしよう、年間維持経費をみなで分担しようという考えである。すると1回あたりの使用料の設定が必要になり、使用回数が多いほど料金は安く出来る。
7.ボートシェアリング成立の条件
現在行われている各種のボート共同利用は、それぞれボートシェアリングの1形態である。今後は<ボートシェアリング>の用語が使われていくことになるであろう。
ここまで世の中全般の<シェリング>の動向、その中で<ボートシェアリング>の実態の考察を行ってきた。
カーシェアリングが一般化してくるに従い、<シェリング>における必要条件が見えてきた。従来のボート共同利用の問題点も見えてきた。
この辺りでボートシェアリング普及のための必要条件を考えたい。
私の考えるボートシェアリング成立の条件は下表の通りである。
1.会員制
ボートが持つ機動性、貸出し・返却の簡略化、運航者の自由確保などを考えると、不特定者への貸出しではなく会員制にすべきであろう。
マリーナ内での展開は会員制が不可欠だろう。
2.入退会の自由
共同所有方式のように殆ど退会の自由がない制度では普及は望めない。
3.運航計画の自由
仲間募集方式のように、オーナーが運航権を持つ形では普及は難しい。
どこへ遊びに行くかは借主の宰領としたい。
しかし一方で会員同士の乗り合いにより出航機会数を増やし、稼働率を高めないと、結局はクラブを維持出来ないことになる。
最も工夫を要する点である。
4.損害保険付保
船体保険の付保は必須である。
5.装備の充実
GPS、VHFほか、安全のための装備
6.管理者
貸出し・返却の管理、一貫した艇整備の実現のために、常時管理にあたる管理者を定めたい。管理者はオーナーでもプロ事業者でもよい が、そのためのコストを計算に入れなければならない。
7.場所の利便性
多くの人がマリンレジャーの楽しさを体験するために、貸出し・返却の場所は便利な、設備の整った、利用者の多い場所としたい。
これが年間の稼働日数を増やし、利用料金を下げることにも繋がる。
幸いヤマハが大型の公共出資のマリーナで<シェアリング>を行う先鞭をつけてくれた。
8.充分な会員数
上記の条件をみたすためには、1艇あたり10−20名の会員数確保が必要であろう。
(10−20名の確保は難しいだろうなと思ったが、「シースタイル」の会員数を聞いたら現在1隻あたり41名だという。それが出来ているのが素晴らしい。)
これだけの条件を 全うするビジネスモデルを構築しなければならない。
8.まとめ
多くの若い人達がマリンライフを楽しめるように、ボートシェアリングの普及を望みたい。
幸いヤマハが公的マリーナでのボートシェアリング展開の途を開いてくれた。
実行の具体策は、今後 若いオーナーや企業家の創意工夫と挑戦を期待したい。
以上 (初稿 2008・8)
付録
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
a sailor, a marinesurveyor and a gardener
Office:パシフィックカレントコーポレーション 森下一義
413-0232静岡県伊東市八幡野1103-73 Tel&Fax:0557-53-4401Mail:pccgarden@gmail.com ブログ:http://blogs.yahoo.co.jp/windyholiday2