今年のボート&ヨット値上げ状況

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パシフィックカレント 代表

森下一義

 

 ボートショーでもらってきたカタログを見ながら気が付いた。なんだか値段が上がっているようだ。このところ国内の不景気と一時の円高の余慶で物価は落ち着いていたが、輸入品の多いボート&ヨットについてはいよいよ円安の影響を受け始めたのか?

 そこで思い立ってボート&ヨットの昨年と今年の価格比較を行ってみた。

 

1、資料

オーシャンライフ「マリンスポーツカタログ」

KAZI「マリンスポーツガイド」

ボートショーで入手したカタログ

各扱い店への電話問い合わせ

 

2、調査対象

  カタログ、ガイドからデータ入手可能で、日本国内である程度販売実績がありネームヴァリューのある艇種を81艇種選んだ。

  しかしこのうち22艇種は昨年または今年の円価格表示が不備で、比較検討が不可能であった。

  従って59艇種について価格変動の実態を検証した。

 

3、分析の手法

  各艇種毎に対前年価格比較が可能で、出来るだけ全サイズにわたるような4〜7型式を選んでその平均値上げ率を調べたが、艇種によっては1〜3型式しか選べないケースもあった。

  ここでいう艇種別とはメーカー別の意味に近く、例えばヤンマーは全ヤンマー艇で1艇種とした。

 

4、艇種別値上げ率(上位10銘柄)

種別

艇種

建造国

扱い店・メーカー

97価格:万円

98価格:万円

変動率%

ボストンホエラー

マツイ

536

679

126.7

エリクソン

エイジツ

2250

2780

123.6

シーレイ

新西武自動車

2013

2370

117.7

カタリナ

西日本ヨットセールス

1357

1575

116.1

マクサム

スナガボート

827

950

114.9

パシフィックシークラフト

エイジツ

1629

1856

113.9

ブラックウオッチ

住友重機械工業

5470

6140

112.2

オーシャンヨット

住友重機械工業

9707

10837

111.6

ブラックフィン

日産

5173

5763

111.4

バンクーバー

岡崎造船

1683

1874

111.3

-

総計

-

-

-

-

104.8

5、国別値上げ率

国別

対象艇種数

値上げ率平均

値上げ実施艇種数*

アメリカ

22

110.0

18

ヨーロッパ

15

103.7

10

カナダ

1

100.0

0

オーストラリア

2

100.0

0

台湾

4

100.0

0

日本

15

100.4

1

合計

59

104.8

29

*3%以上の価格変動を値上げ実施艇種とした。

 

6、所見

  検討対象59艇種のうちちょうど半分の29艇種が値上げを実施し、値上げ率は全体平均で4.8%であった。

  この不景気のなかで思いきった値上げ実施と見るべきであろう。為替変動の影響を大きく受けたところとそうでないところがあるだけに、値上げ価格の公表には相当の抑制が働いた筈である。冷え切った購買意欲が、この値上げで更に落ち込むことは間違いない。

  日本国内のメーカーは殆ど据え置きである。ヤマハはこまめに全型式について%以下のUPをしているが、法定安全備品の値上げ分だという。ただし輸入艇のフォーミュラは8.4%、ジャヌーは5.1%上げている。日産も日産艇は据え置きだが、ブラックフィンは11.4%の値上げを行っている。

  国別に見ると圧倒的に米国銘柄の値上げが大きい。22艇種中18艇種が値上げを実施し、平均値上げ率が10%と大きい。わが国への輸入の大半を占めるだけに、今後国産艇の価格への影響が予想される。と同時に今後欧州艇その他との競争力に問題が出るかもしれない。

  欧州の銘柄は15艇種中10艇種が値上げしながら平均で3.7%UPにとどまっている。ただしポンドと円の変動が大きい中で対象艇種に英国銘柄が少なかったことや、わが国のボート界に影響の大きなベネトウ、ギブシーなどのデータが含まれていないことなど、欧州銘柄の動きを見るにはややデータ不足であり、もう少し時間が必要だ。

  これに対しアジア、オセアニア勢は為替に関しては有利な状況にある。揃って据え置きとなっている。ビジネスチャンスとなし得るかどうか。

  いづれにしても値上げをせずにすんだ国産艇メーカーは、この際輸入艇の値上げをチャンスに受けとめて新たな気持ちで市場開拓に元気を出してもらいたい。陸に不況の風が吹こうが、海は変わらずに我らを待っているのだから。

以上

 

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