輸入ヨットの販売利益
かってバブルの時期(もうこれも10年昔になるのですね)、輸入ヨットの価格は
日本国内の販売権をとった業者が好き勝手に付けていました。
だから仕入価格に5〜10割も掛けていました。宣伝費、ボートショー経費等々
の経費も相当かけていましたから丸儲けしていたとも言えませんが、旨味はあった
と言えます。商社や業者が輸入権を獲得するのに狂奔し、そのために年間引き取り
義務を課せられて痛い目にあった話は枚挙に暇ありません。
しかし日本人が円高の試練を経て個人輸入の自由を知り、海外情報に直に接する
ようになった昨今、輸入ヨットを買おうとするお客さまならまず100%の方がそ
の艇の海外での価格を知っています。
メーカーにもよりますが、現在海外の艇の主流は工場建値を打ち出しています。
お客はその価格で買おうと思えば買えるのです。だからボート販売業者は工場建値
よりも高く売る口実がなくなってしまいました。
ではどうするのか。メーカーは末端ユーザーに対して工場建値を打ち出す一方、
デイーラーにはコミッションを落とします。通常12%程度です。デイーラーはこ
れでやっていきなさい、というわけです。
日本国内の総販売代理店が直売する場合ならまあこれでもやれるでしょう。しか
し、日本での業者の大半はサブデイーラーです。彼等はこの12%の中から分け前
を頂戴するしかありません。率は引き受けるリスクによって変わりますが、4から
8%です。
為替変動のリスクをどこが負うのか?、輸送中のリスクの所在は?、いろいろ取
り決め方はありますが、4〜8%の利益はとてもリスクを負える額ではありません。
僕がやっていた頃の三河御津マリーナでは、マリーナとしての立場の強みを背景に、
敢えて工場建値に5%を乗せて販売価格にしていましたが、現在ではなかなかそれも
難しいようです。
また通常工場建値は工場渡しが条件です。メーカーはそこで引渡してしまいます。
客がメーカーから直に買った場合、たとえメーカーが船積みまでは手配してくれた
としても、輸送中の危険負担、日本に着いてからの通関、艤装、船検取得など、な
かなか個人では知識も、手間も、時間も、こなしきれないところがあります。
そこでメーカーの工場から日本での引渡しまでの業務をを請け負って、そこで若
干の利益を出すことを考えます。ただしこの場合も、昨今では運賃を水増しして請
求することなどはよくないようです。運賃は運賃で正直に計算し、危険負担や手間
賃の部分を手数料として認めてもらうことになります。いづれにしろ旨味のある商
売から遥かに遠いものです。
これが実情ですからとても広告やパンフにお金をかける余裕はありません。ボー
トショーが淋しいのも仕方がないのです。とにかく6メートル以上の輸入ヨットの
販売隻数が、全部で年間40〜50隻しかないのですから。
輸入艇の販売がこのように旨味がなく、国内メーカーの新艇も買い叩かれて利益
が減っている中で、お客さえあれば中古艇の販売が一番妙味があると言われていま
す。いろんな事情(新艇の供給が少ないとか・・)で中古艇は品薄気味です。殆ど
が仲介で仕入れリスクがありません。それに何よりコストが判らないので値段を叩
かれないですみます。実際に仕入れて販売する業者は安く仕入れて高く売る商売の
王道をまさに実行しています。 97/10 Kaz