横浜海員会館に泊った

 

 海に憧れ、海に浸りきって生きてきたけれども、所詮アマチュアというコンプレックスが常にあります。

 だからでしょう、船員とか海員の宿泊所なんていうと、とにかく泊ってみたくなります。なかでも横浜海員会館はかねてからの憧れでした。

 そこにやっと泊ることが出来ました。

 

 横浜ベイサイドマリーナでマリンサーベヤーの講習会をやることになり、伊豆から通えない事もないのだけど、講師の僕が遅れたりしては申し訳ないので横浜で2泊することにしたのです。それで勇躍予約を申し込みました。これまで2度ほど満員で断わられていたのですが、今回はOKになりました。

 

 現在横浜海員会館はエスカル横浜という洒落た別名を持っています。場所は山下町マリンタワーのすぐそばです。氷川丸まで500メートル、元町へ200メートル、中華街へ100メートルという便利至極な場所にあります。僕はJR石川町駅から歩きました。7〜8分でした。

 6階建て66室、前庭をゆったりとって、大きな錨を飾って、いかにも港町横浜の海員施設として貫祿十分です。宿帳に「マリンサーベヤー」と記帳して海事関係者であることを証しました。

 

 というわけですが、泊った感想は「せっかくならもう少し色気のあるところに泊ってもよかったな」というところです。

 1泊7千円(本当の船員なら6千円)で、部屋はビジネスホテルよりはずっとゆっくりしていて、申し分ないのですが、安売りパックでインターコンチあたりに9千円で泊れると思うと、その方がよかったかなとも思います。

 しかしまあ、かねての憧れが充たされて満足でした。

 

 朝食(750円)の食堂での相客は、家族連れが4組、これには老夫婦もいれば学齢前の子供を連れた若夫婦もいます。この施設本来のお客でしょう。女性の2〜3名連れが3組、当然というべきかシテイホテルの女性連れとは雰囲気が違います。そして海事関係者である紳士、つまり僕が一人です。

 

 それにしてもマリーナを作り、マリンサーベイ講習会を開催する僕はもう立派な海事関係者ですね。けっしてアマチュアではない。嗚呼。

 釣り師になった開高健の嘆きが身にしみます。「俺は趣味を生業(なりわい)にしてしまった。俺はなんて馬鹿だったんだ。俺は趣味のない人間になってしまった!」

 

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