中古艇の査定について

 

 <先日、この提案書をもって中古艇事業推進協議会の坂井会長(ワイズマリン社長)と1時間半ほど会談し、今後の中古艇査定について改善の提案を行いました。---森下>

 

 この度「中古艇事業推進協議会」が発足されましたこと、まことに大慶に存じます。かねて待望されていたことであり今後益々のご発展をお祈り致します。

 

 さて貴会の事業計画として「査定基準の策定」「査定員資格制度の導入」を挙げていらっしゃいます。

 査定とマリンサーベイとは必ずしも同一ではないかもしれませんが、非常に近い関係にあると思います。長らく中古艇取引を事業として取り組んでこられた皆様に比べ、わが国のマリンサーベヤーの歴史はまだ非常に浅いのですが、関係業者として、「査定基準の策定」「査定員資格制度の導入」等に関し、いささか希望を述べさせて頂きます。

 ご検討頂ければ幸いです。

 

1、対象とする艇種

  現在わが国の中古艇市場に流通する艇種のうち、輸入艇が占める割合は45%程度に達すると思われます。(雑誌広告物件での比重)

  査定基準策定に際し、是非とも輸入艇も対象に含めて下さるようお願い致します。勿論すべての艇種を対象とすることは出来ませんが、流通の1%を占める艇種までは含めるべきではないでしょうか。

  国産艇のみとした場合、折角の査定基準策定がユーザーのためでも中古艇業者のためでもない、メーカーのためだけのものになるような気がします。

 

 

2、査定対象年式について

  これまでの査定基準は精々進水後10年式までであり、しかも10年経つと殆ど価値がなくなるような体系になっていました。これは昔の国産艇の耐久性を反映していたのでしょう。

  海外ではプレジャーボートは20年30年以上も乗り継ぐもののようです。昨今国産艇の耐久性も向上しつつあります。わが国で流通している中古艇の平均年式もボートで7年半、ヨットで10年となっています。

  査定基準は15年式くらいまで必要になってきています。

 

3、査定基準値は小売値か仕入値か

  従来、査定基準値は業者がオーナーから仕入れる価格をとってきました。これを、今後査定対象艇の小売値で表示するようにすべきではないでしょうか。

  理由の1は今後貴会が作成する「査定基準」は、一般ユーザーにも公開されるものになるだろうからです。そうしなければ貴会の目指すユーザーの安心感、透明感の確保、業界の健全な発展は望めないでしょう。

  理由の2は中古艇流通において、業者の仕入れ販売が全てではないことです。仲介、個人間取引も大きなウエイトを占めます。この場合、艇の末端価格、小売値表示の方がユーザーにとっても業者にとっても便利です。

 

4、査定基準は新艇価格に対する掛け率表示ではなく、絶対額表示を。

  これまで「査定」は対象艇の新艇時価格に対する%で表示されてきました。

  我々は物品税の変動、為替管理の変動、バブルの前・中・後を経験して、新艇価格が必ずしも説得力を持たないことを知りました。これからも為替変動、インフレ、デフレ、何が起きるか判りません。今後の「査定」は現在価値による絶対額表示にして頂きたいと思います。まして今後は高年式艇の査定をしなければならないのです。進水後10数年の艇において新艇価格に対する掛け率がいかほどの意味を持ち得ましょうか。

 

5、査定書のフォーム統一と査定(点検)項目の統一

  土地や自動車における「物件説明書」のように、中古艇の「物件説明書」の様式統一は急務です。現在ユーザーは展示場毎にバラバラな説明書を見せられ、比較検討が出来ない状況です。

  しかし査定書、査定項目の統一は如何なものでしょうか。ユーザーの艇に対する関心は千差万別です。耐久性、安全性に関心のある人、レース性能を知りたい人、機走性能を知りたい人、転売時の価格を知りたい人、様々です。査定する人の経歴、得意分野も様々です。

  査定項目、様式の統一がユーザーのためになるかどうか、充分な検討が必要です。少なくとも艇の用途別(デイクルーズ艇か、外洋航海艇か、フィッシング艇か、レーサーか・・・)、査定の目的別(価格評価か、安全性確認か、利便性確認か・・・)に分けるべきでしょう。

 

 

 つまり私の考える「査定基準」は、国内で流通する艇全般を対象として、その小売価格を一定の幅(高値〜安値)をもって表示する、「サイズ別・艇種別・年式別実態価格表」(毎年更改)ということになります。

 このような「価格表=イヤーブック」こそユーザーも中古艇業者も待ち望むものではないでしょうか。またこれあってこそ貴会の望む中古艇の健全な流通と業界の発展があるのではないでしょうか。

 

 貴会をおいて他にこのような「価格表=イヤーブック」を作成する機関はないと思われます。

 どうかこの実現に向けてご尽力賜わりますようお願い申し上げます。

 

 以上 98/8/25

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