「中古艇ドットコム」分裂事件の考察  201288

 


7月20日頃でしたか、普段行きつけの「中古艇ドットコム」を訪れると、HPの冒頭に以下の文章が踊っていました。

 

 


 

「中古艇ドットコム」では全国各地域に担当者・加盟店を配置していたのですが、どうやらそのうちの何人かが反乱を起こして「中古艇ドットコム」を脱退し別のグループを立ち上げたということのようです。
その後「中古艇ドットコム」から、脱退グループが広告の一部を勝手(出品者にも断りなく)に自サイトに移しているとの情報が入りました。

 

はてさて、と思っていましたら8月の初めにはもうこのメッセージは消えていました。 (あまり名誉なことではありませんからね)

 

「中古艇ドットコム」は中古艇紹介業界の中で近年非常に取扱い実績を伸ばしてきた会社です。

それは創業者の景山久範氏が構築したシステムのコンセプトが優れ、かつ真面目に事業を展開してきたことでユーザーの信頼を克ち得た結果だと思います。

私はマリンサーベヤーとして「中古艇ドットコム」扱いの艇を購入しようとするお客様からサーベイを依頼されることが何度もあり、その際「中古艇ドットコム」の担当員と接触しましたが、いつもその姿勢と資質に感心していました。

 

 

さて、本稿では下記の点について考えてみようと思います。

1.「中古艇ドットコム」が実績を伸ばした理由

2.「中古艇ドットコム」のシステムが優れていた点

3.分裂騒ぎが起きた理由

4.今後の見通し

 

       はじめに―「中古艇ドットコム」の基システム

              ・中古艇売却希望の情報を集めてサイトに掲載する

              ・各地域に担当者・加盟店を配置し、情報の物件を直接精査してサイトに報告する

              ・購入希望者の物件見学に立ち会う

              ・売買には介在しないが、売買契約書書式を提供するなど助言する

              ・成約後、売却希望者より手数料を受領する

 

       1.「中古艇ドットコム」が実績を伸ばした理由

              1)広告環境の変化

                ボートオーナーが艇を売ろうとする場合、まず広告が必要です。

                従来はまずボート販売業者に告知を依頼するのが主流でした。そして業者はボート雑誌などに売り広告を掲載しますが、この場合広告掲載料が必要となります。1隻あたり数千円であっても成約まで半年1年と出し続ければ何万円にもなります。業者にとって少なくない負担でした。

                15年ほど前からネットによる広告が活発になりました。これはサーバー容量の増大などで多くの情報を載せられるようになってきたことと、売却側・購入側双方がネット情報に触れる機会が増えたことによります。まして掲載のコストが雑誌に比べれば遥かに安いのです。

                「中古艇ドットコム」がネット情報だけで中古艇仲介業界に入ってきたのはこういう時期でした。

              2)業者委託と個人売買

                中古艇売買においては中古車のように業者が物件を買い取って自己物件として販売することは(殆ど)ありません。まず買い主を探し、見付かってから物件を買い取って販売するのが通例です。疑似委託販売です。

                その理由は中古車に比べて金額が高額であること、保管経費が多額に上ること、成約までに時間がかかること、等によります。

                買い主側も個人売買を敬遠する風潮がありました。それは遠隔地の気心の知れない人間との契約が不安だったのと、のちのちの問合せが厄介等の理由によります。個人売買には消費税がかからないメリットがありながら好まれませんでした。

                反面、業者がどれほどの利益を乗せているかに不信もあり、値切ってみるなどの価格折衝が通例でした。

              3)小型船舶登録制度の発足

                平成14年に小型船舶登録制度が発足しました。これにより小型船舶の所有、譲渡の登録が義務化され、取引に際しての不安が大きく減少しました。個人売買を基本とする「中古艇ドットコム」の営業がずっとやり易くなりました。

 

       2.「中古艇ドットコム」のシステムが優れていた点

              1)掲載情報の品質が良かった

                「中古艇ドットコム」では売却希望者の物件情報を担当者が実際に現地に行って確認し、多数の写真と詳細な報告を掲載しました。検分に行った担当者の肉声が聞こえるような報告で、これがお客の心を掴んだと思います。創業者景山久紀氏の作ったマニュアルが良かったのでしょう。写真の数も当時こんなに多くの写真を載せるサイトはありませんでした。

              2)売買契約書書式の提供

                個人売買を基本としながらも、売買契約書の書式を提供し、その授受に立ち会うというコンセプトが絶妙でした。これが素人の買い主に大きな安心感を与えました。「中古艇ドットコム」成功の秘訣はここにあったのではないかと思います。

              3)担当者・加盟店の全国配置

                ネットが舞台ですから情報は全国にまたがります。とても本部だけではその全部に対応出来ません。そこで各地域ごとに担当者・加盟店を募り、配置しました。これが急激な事業発展を支えたと思います。なかなかの事業手腕です。

              4)個人コラム

                最初の頃、「中古艇ドットコム」のサイトには「個人コラム」のページがあり、景山氏の過去ログなどが載っていました。なかなか面白く、その中の「ボート保有のコスト」など私の「ボートシェアリング試論」に今でも引用しています。そこに見られた人間性がサイトの信頼性を高めたと思います。 なお「個人コラム」のページはいつの間にか無くなりました。

 

       3.分裂騒ぎが起きた理由

              私は騒動の実態を全く知りません。ただ「中古艇ドットコム」本部は非常に憤慨し、<脱退は不法・・・>と言っているようです。

              そもそも私は担当者・加盟店との契約内容を知りません。

              中古艇ドットコムが加盟店と契約に際し、フランチャイジーのように権利金(100−200万円?)の納付を求めると聞いたことはあります。

 

              不満からなのか、欲からなのか、独立運動は起きました。

 

              私は「中古艇ドットコム」側にも規律の緩みがあったように思います。それは「担当者紹介」のページで顔写真が無かったり、自己紹介欄がブランクになっているのが散見されたからです。

 

              成功の驕りなのか、貧すれば鈍すなのか、いずれにしろ「中古艇ドットコム」の傷の癒えること早からんことを祈ります。

               その後景山氏から<自分が一時期実務を離れていた>との報告を頂きました。その留守の間の騒動だそうです。 いけませんね。

             またその後両者で話が付いたとも聞きました。

       4.独立軍の今後

              独立軍の拠点は「船ネットドットコム」http://www.funenet.com/ というようです。

 

              分離した人達の理由も計画も知りませんから何とも言えませんが、新しいサイトの中に次の一文を見付けました

  

船ネットドットコムは、見学・試乗への立会い等のお手伝いをさせて頂きますが、あくまでも広告業であり、お取引の安全を保証するものではございません。
更に出品者の身元を保証するものでもありませんので、金銭の授受に関しては、慎重に自己責任で行うようにして下さい。

 

 

 

 


 


              彼らは<中古艇仲介のサービス業>ではなく <中古艇の広告業> と自己規定しているようですが、これだけではどういうサービスを行いどういう特色をもって事業をするのか判りません。新会社としては打ち出しが弱いのではないでしょうか。


 
2012・8・9  OfficePCC:マリンサーベヤー森下一義

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