「1421−中国が新大陸・アメリカを発見した年」

 

「1421」とは何か、の問合わせを受けました。
 
この本の正式の題名は「1421−中国が新大陸を発見した年」(ギャビン・メンジーズ ヴィレッジブックス)で、題名通り1421年にアメリカ大陸が明の永楽帝によって派遣された鄭和の艦隊によって発見されたという説を展開する書物です。
1421年はコロンブスのアメリカ大陸発見1492年を70年遡ります。
著者のギャビン・メンジーズは英国人で、もと英国海軍の潜水艦艦長です。それだけに海図の見方や、海から陸へのアプローチに学者や歴史家とは違った視点を持っています。
 
彼は世界中の図書館を巡り、古地図・古海図を調査します。そして1492年以前に米大陸が記されていた証拠を提示します。遺跡や遺品を調査して中国の移民、文物を実証しようとします。
そもそも鄭和の大航海は歴史的事実です。彼の大航海は7次におよびますが、その大きな目的はアジアから中東、アフリカにかけての諸国の代表団の送迎にありました。つまり明に対する朝貢使の送迎です。メンジーズは鄭和が多くの艦隊を引き連れて航海し、各方面に分派したのだと言います。
そしてアフリカ方面のみならず、米大陸の西岸、東岸、マゼラン海峡、南極大陸、オーストラリア大陸に達した証拠があると言います。それは経度と緯度を測定する技術、大船を建造する技術を必要としますが、当時の中国人はその技術を持っていたと言います。
現在それらを記す歴史がないのは、モンゴルの襲来に備え万里の長城の建設にとりかかった明帝国が一転して鎖国政策をとり、大航海に関する一切の記録を抹消したからだと言います。
この説に従えばコロンブスは勿論、マゼランもクックもバスコ・ダ・ガマも海図を持って航海したことになります。
 
私は以前読んだ「鄭和の南海大遠征」(宮崎正勝、中公新書)を引っ張り出して併読しましたが、メンジーズの説を100%信ずるには至りませんでした。
それにしても魅力的な書物であり、大変な労作です。そしてメンジーズの研究はまだまだ進行中です。
 
元船乗りの一介のアマチュア・デイレッタントが、世界に向けてこれだけの問題提起をしていることに敬意を表します。
興味のある方は、www.1421.tv/  をご覧下さい。
 
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞04/9/15

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